睡眠中の呼吸を守る、歯科からのアプローチ

睡眠時無呼吸症候群、特に閉塞性睡眠時無呼吸症候群、OSAは、睡眠中にのどの空気の通り道である上気道が狭くなったり、一時的に塞がったりすることで、呼吸が止まる、または浅くなる状態を繰り返す疾患です。

代表的な症状として、いびき、睡眠中の無呼吸、夜間の息苦しさ、起床時の頭痛、日中の強い眠気、集中力の低下などがみられることがあります。

おおさか歯科医院では、医科で睡眠時無呼吸症候群と診断された患者さまに対して、医師からの診療情報提供に基づき、睡眠時無呼吸症候群用の口腔内装置、いわゆるスリープスプリント・マウスピースの作製に対応しています。

保険診療で睡眠時無呼吸症候群用の口腔内装置を作製する場合は、医科の保険医療機関、または医科歯科併設医療機関の担当医師からの診療情報提供に基づく依頼が必要です。

睡眠時無呼吸症候群を放置するリスク

睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に低酸素状態と覚醒反応が繰り返されます。その結果、交感神経の過活動、血圧上昇、酸化ストレス、炎症、血管内皮機能の低下などが生じ、全身へ影響する可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群は、単なる「いびき」ではなく、脳卒中や心臓病などの全身の病気と関連することが報告されています。

海外の大規模研究では、閉塞性睡眠時無呼吸症候群がある方は、ない方と比べて、脳卒中や死亡のリスクが高くなる可能性が示されています。また、重症の睡眠時無呼吸症候群では、全死亡リスクや心血管疾患による死亡リスクが上昇することも報告されています。

ただし、これらの数値は研究に参加した集団全体での結果であり、すべての患者さまにそのまま当てはまるものではありません。年齢、体重、高血圧、糖尿病、心臓病の有無などによってリスクは異なります。

そのため、いびきや無呼吸を指摘された場合は放置せず、まず医科で検査を受け、必要に応じてCPAP療法や口腔内装置など、適切な治療を検討することが大切です。

図1 睡眠時無呼吸症候群、OSAの病態と全身リスク

睡眠中に上気道が狭窄・閉塞すると、無呼吸や低呼吸が反復し、低酸素、高炭酸ガス血症、覚醒反応が繰り返されます。その結果、交感神経活性化、酸化ストレス、炎症、血管内皮機能障害などを介して、高血圧、循環器疾患、脳卒中リスク、日中の眠気や交通事故リスクに関与する可能性があります。本図は文献を参考に、当院用にオリジナル作成したものです。

図2 睡眠時無呼吸症候群、OSAのリスク:論文データの要約

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、脳卒中または死亡、全死亡、心血管死亡のリスク上昇と関連することが複数の研究で報告されています。本図は、Yaggi HKらのNEJM論文およびGe XらのPLOS ONE論文の公開データを基に、当院ホームページ用にオリジナル作成したものです。5年生存率は、YaggiらのKaplan–Meier曲線からの概算です。

歯科で行う治療:口腔内装置、スリープスプリント

睡眠時無呼吸症候群の主な治療には、CPAP療法、口腔内装置、減量、体位療法、耳鼻咽喉科的治療、外科的治療などがあります。

歯科で作製する口腔内装置は、睡眠中に下あごをやや前方に保持することで、舌や軟口蓋が後方へ落ち込みにくくし、上気道を確保しやすくする装置です。

一般的には、軽症から中等症のOSA、またはCPAPが使用困難な方などで選択されることがあります。ただし、重症の睡眠時無呼吸症候群では、CPAP療法が標準的治療として優先されることが多く、口腔内装置の適応は医師の診断と治療方針に基づいて判断されます。

図3 睡眠時無呼吸症候群、SASの診断と治療の流れ

睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、まず医科で検査・診断を受け、AHI、症状、合併症の有無を評価します。軽症から中等症では、生活習慣改善、体位療法、口腔内装置が選択肢となることがあります。重症例や合併症がある場合は、CPAP療法が第一選択となることが多く、必要に応じて医科で追加治療が検討されます。本図はSAS診療ガイドライン2020および日本睡眠歯科学会診療ガイドライン2020を参考に、当院用にオリジナル作成したものです。

SomnoDent®を用いた口腔内装置治療に対応

おおさか歯科医院では、睡眠時無呼吸症候群に対する口腔内装置治療として、SomnoDent®、ソムノデントを用いた治療に対応しています。

SomnoDent®は、睡眠時無呼吸症候群やいびきに対して使用される、オーダーメイド型の口腔内装置です。患者さまの歯型やかみ合わせに合わせて作製し、睡眠中に下あごを前方へ保持することで、空気の通り道を確保しやすくします。

SomnoDent®は、装着時の快適性や安定性に配慮して設計されており、患者さまの状態に合わせて下あごの位置を調整できる構造を備えています。

当院では、医科での診断結果、AHI、症状、CPAPの使用状況、歯や歯周組織、顎関節、かみ合わせの状態を確認したうえで、SomnoDent®を含む口腔内装置治療の適応を慎重に判断します。

SomnoDent®公式ホームページ

SomnoDent®の詳細については、SomnoMed®公式ホームページもご参照ください。

SomnoMed Japan:SomnoDent® の口腔内装置:https://somnomed.com/jp/patients/products/somnodent/

図4 口腔内装置、OA/スリープスプリントの作用イメージ

口腔内装置は、睡眠中に下顎を前方へ保持することで、舌根沈下を起こしにくくし、上気道を広げることを目的とした装置です。軽症から中等症のOSA、またはCPAPが困難な場合などで検討されることがあります。ただし、顎関節の違和感、歯の圧迫感、かみ合わせの変化などが生じる可能性があるため、装着後の調整と経過観察が重要です。本図は日本睡眠歯科学会診療ガイドライン2020および口腔内装置治療に関する文献を参考に、当院用にオリジナル作成したものです。

当院での治療の流れ

1. 医科での検査・診断

睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、まず呼吸器内科、耳鼻咽喉科、睡眠専門外来などの医科で検査を受けていただきます。簡易検査やPSG検査により、無呼吸低呼吸指数、AHIなどを評価します。睡眠時無呼吸症候群の治療方針は、AHIの値だけでなく、日中の眠気、合併症、全身状態、生活背景などを踏まえて判断されます。

2. 医師からの診療情報提供

保険診療で睡眠時無呼吸症候群用の口腔内装置を作製する場合、医科からの診療情報提供書が必要です。担当医師より「口腔内装置治療の依頼」を受けたうえで、歯科で装置作製を行います。

3. 歯科での診査・型取り

当院では、歯や歯ぐき、顎関節、かみ合わせ、むし歯、歯周病の状態を確認します。歯の動揺が強い場合、歯周病が進行している場合、顎関節症状が強い場合などは、先に歯科治療や慎重な判断が必要になることがあります。

4. SomnoDent®を含む口腔内装置の作製・装着

患者さまの歯型とかみ合わせに合わせて、上下の歯に装着するマウスピース型の装置を作製します。装置により下あごを前方に保持することで、睡眠中の気道を確保しやすくします。装置の装着感、顎関節の状態、歯の圧迫感、かみ合わせを確認しながら、必要に応じて調整を行います。

5. 装着後の調整・医科での再評価

口腔内装置は、作製して終わりではありません。装着後に、顎の違和感、歯の痛み、口腔内の違和感、かみ合わせの変化などを確認し、必要に応じて調整します。また、いびきや眠気が改善していても、無呼吸や低呼吸が十分に改善しているかは自覚症状だけでは判断できません。必要に応じて医科で再検査を行い、治療効果を確認することが重要です。

このような方はご相談ください

以下のような症状や状況がある方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。

  • 睡眠中のいびきを指摘されたことがある
  • 寝ている間に呼吸が止まっていると言われたことがある
  • 日中に強い眠気がある
  • 朝起きたときに頭痛やだるさがある
  • 集中力が続きにくい
  • 高血圧、不整脈などを指摘されている
  • CPAPが苦手で継続が難しい
  • 医科で口腔内装置をすすめられた
  • SomnoDent®など、快適性や調整性を考慮した装置を検討したい

睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、まず医科での検査・診断を受けたうえで、口腔内装置の適応についてご相談ください。

注意事項

口腔内装置は、すべての睡眠時無呼吸症候群に有効な治療ではありません。

重症例、強い肥満、鼻閉、扁桃肥大、心不全を含む循環器疾患をお持ちの方などでは、CPAP療法や医科での治療が優先される場合があります。治療方針は、検査結果、症状、全身状態、医師の診断に基づいて決定されます。

また、口腔内装置の装着により、歯の痛み、顎関節の違和感、唾液量の変化、口腔内の乾燥、かみ合わせの変化などが生じることがあります。安全に治療を進めるためには、装置作製後の調整と定期的な経過観察が重要です。

おおさか歯科医院では、医科歯科連携のもと、患者さまにとって継続しやすく、より質の高い睡眠時無呼吸症候群治療を目指しています。

参考文献・参考サイト

1. Yaggi HK, Concato J, Kernan WN, et al. Obstructive sleep apnea as a risk factor for stroke and death. New England Journal of Medicine. 2005;353:2034-2041.

2. Ge X, Han F, Huang Y, et al. Is Obstructive Sleep Apnea Associated with Cardiovascular and All-Cause Mortality? PLOS ONE. 2013;8:e69432.

3. 日本呼吸器学会ほか. 睡眠時無呼吸症候群、SAS、の診療ガイドライン2020.

4. 日本睡眠歯科学会. 閉塞性睡眠時無呼吸に対する口腔内装置に関する診療ガイドライン、装置の作製に関するテクニカルアプレイザル:2020年版.

5. SomnoMed Japan. SomnoDent® の口腔内装置. https://somnomed.com/jp/patients/products/somnodent/